政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 それからの日々は、あっという間に流れていった。

 ちょうど瑠璃が移植のために日本を発つのは私の誕生日前日となり、私もそれに合わせてアパートを引き払い、航君がひとりで暮らしているマンションへ引っ越すこととなった。

 幸いなことに荷物は少なく、それほど手間がかからずに準備を終えることができた。そして……。

「瑠璃、元気な姿で帰ってくるのを待ってるから気をつけて行ってきてね」

「うん、頑張ってくるよ」

 空港のロビーで私は車椅子の乗っている瑠璃と視線を合わすように膝を折り、瑠璃の手を強く握った。

 きっと大丈夫、絶対に成功する。そう信じたいのに不安が付き纏って離れてくれない。少しでも払拭したくて、しっかりと瑠璃の手のぬくもりを感じる。

「大丈夫よ、千波ちゃん。きっとお母さんが天国で見守ってくれているはずよ。なにかあったらすぐに連絡をするから、千波ちゃんは安心して結婚の準備を進めなさい」

「そうだよ、お姉ちゃん。私が戻ってきたら結婚式を挙げるんでしょ? しっかり準備していてよね」

 伯母に続いて冗談交じりに瑠璃が言うものだから、つい口元が緩んだ。

「そうだね、瑠璃が元気になって戻ってくる前にちゃんと準備を進めておくね」

「約束ね」

 瑠璃を指きりを交わしてゆっくりと立ち上がり、伯母に深々と頭を下げた。
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