政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 だけど瑠璃の姿が見えなくなると、ずっと我慢していた涙が零れ落ちた。

 入院していることがほとんどで、一緒に生活した時間は短い。でも病院に行けばいつも会うことができて、母が亡くなり、父がいなくなってからは本当に瑠璃が私の心の支えだった。

 でもずっと満足いく治療を受けさせてあげることができなくて、瑠璃にもずいぶんとつらい思いをさせてきた。やっと最高の治療を受けて、元気になれる。

 そのためのしばしの別れだとわかってはいるけれど、やっぱり寂しいよ。

 外に出て、瑠璃と伯母が乗った飛行機を見送るつもりだったのに、泣いたままじゃいけない。だから早く涙を止めなくちゃって頭ではわかっているのに、そう思い通りに止まってくれなかった。

 拭っては溢れ出る涙を必死に拭う。

 多くの人が行き交う空港のロビーで、どれくらいの時間泣いていただろうか。最初は気にする余裕もなかった人目が徐々に気になり始めた頃、涙を拭う手を掴まれた。

 びっくりして掴まれている腕を辿っていくと、私を心配そうに見つめる航君がいた。初めて見る彼の表情に涙が止まる。

「擦りすぎた、赤くなっている」

「えっ? んっ」

 優しく目に溜まっている涙を拭われ、くすぐったくて声が漏れた。

「悪かった、どうやら間に合わなかったようだな」

 今度は申し訳なさそうに謝る彼に、なぜか胸がトクンと跳ねた。

 なんでここでドキッとするわけ? それよりも早くなにか言わないと。
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