政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「いっ、いいえ、そんな。お仕事なら仕方がありません。それに瑠璃も、元気になってから航君に会うのを楽しみにしていると言っていましたから」

「……そうか」

 呟いた彼の口角は少しだけ上がり、たったそれだけで優しい表情に見えて目が離せなくなる。

 思いっきり笑っているわけではないのに、どうしてこんなにも惹きつけられるのだろう。普段はあまり感情が表に出ない人だから? だからさっきから胸が苦しいほどドキドキしているの?

 自分の気持ちなのにわからず頭を悩ませていると、航君はそっと私の手を握った。

「外で見送りしよう」

「は、はい」

 手を引いて先を歩く航君だけれど、私の歩幅に合わせ、時折早く進みすぎていないか気遣ってくれるのがわかり、ますます胸の鼓動は増すばかり。

 本当にどうしちゃったの? 私。この前会った時に、まるで私に好意を寄せているかのようなことを言われたからか、すごく意識しちゃっている。

 展望デッキに来てからも、航君はギュッと私の手を掴んで離すことはなかった。だけどそのおかげで寂しい気持ちは薄れ、瑠璃が乗った飛行機を泣かずに笑顔で見送ることができた。

 そして航君は飛行機が飛び立った後もしばらくの間、雲ひとつない青空を見つめる私に付き合ってくれたんだ。
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