政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 するとスタッフは、テーブルにキャンドルを置いて火を灯すとドアのほうへ移動し、電気を消した。

 キャンドルの明かりだけが灯る幻想的な室内で、航君は立ち上がり、ゆっくりと私のほうへ移動してきた。
 そして私の前で足を止め、航君はいきなり跪いた。

「航君?」

 びっくりして立ち上がった私の左手を彼は優しく握り、真剣な瞳で私を見上げた。

「求婚しておきながら、ちゃんとしたプロポーズが後回しになったままですまなかった」

 そう前置きして彼は続ける。

「きっかけはどうであれ、結婚する以上、千波のことを生涯かけて大切にすると誓おう。もちろん千波の家族もだ。……どうか俺と結婚してほしい」

「航君……」

〝好きだ〟〝愛している〟といった愛の言葉がないプロポーズ。これが私たちの関係なのだと現実を突きつけられる一方で、彼なりに私との未来を考えてくれているのが伝わってくる。

 だって生涯かけて私を大切にするって言ってくれた。それはつまり、彼の望み通りに子供を産んだ後も夫婦関係を続けてくれるってことでしょ?

 はっきりと言葉にしてくれないけれど、私と同じように結婚してから夫婦としての距離を縮めていきたいと、航君も思っている。そう自惚れてもいいだろうか。

「千波、返事をもらってもいい?」

 少しだけ眉尻を下げた彼に聞かれ、我に返る。

「えっと、はい。こんな私ですがよろしくお願いします」

 慌てて返事をしたものの、どう言ったらいいのかわからなくて変な風に返してしまった。
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