関係に名前を付けたがらない私たち
「顔見ればわかる。って言いたいところだけど、あいぼんさ、俺がおやすみ3秒だからって眠りが深いって勘違いしてね? 俺、寝るのが早いだけでそこまで眠りが深いわけじゃないよ。夜中、めぐちんに電話で話してたじゃん。”8月末までに決めないといけないんだけど、どうしたらいいんだろう”って。こんな狭い部屋なのに廊下で話してたって聞こえるよ」

 聞かれていた―――

 目の前が真っ白に……なるかと思いきや、既に何もかも承知の耕平の前では特にそれはなかった。私、本当にどうかしてるわ。

「……それで耕平から別れるってこと?」

「うん。もし仮にさ、優希とうまくいかなくなってやっぱ俺がいいって思ってくれるなら、その時に戻ってくればいいじゃん。俺はあいぼんのことずっと好きだし」

―――この人、本気で頭おかしいのかな。

 前々から耕平の考えにはついていけないというか、理解できないところが多かった。
 二股中の私に、四の五の言う権利がないことくらい重々わかってはいたけれど、あまりにも常軌を逸している気がして、私は持っていた割り箸をテーブルに置いた。

「耕平ってなに考えてるのかぜんっぜんわかんない。私が浮気してるのに、何で怒んないの? 何でそんなに飄々としてられんの?」

 私がなぜ怒っているのか、まるでわからない。そんな顔をしている耕平に、私は無性にイライラした。いや、だから、私にとやかく言う権利はないのは分かっているんだけど。
< 39 / 67 >

この作品をシェア

pagetop