あの日溺れた海は、
「いやだ〜華〜なんで同じクラスじゃないのよ〜!」
帰りのHRが終わった途端、月が半泣きで5組の教室へ入ってきた。
朝、昇降口の前で張り出されたクラス表を見た時も同じように泣き顔で抱き着いてきたのに、懲りずに半泣きでわたしに抱きつく月に、「はいはい。」と適当に返事をする。
月とは中学1年生の時から中学卒業まで同じクラスだったので文芸部の中でも特に仲が良く、所謂親友とも呼べるほどだ。
人間関係を構築するのが苦手なわたしにとって月の存在はかなり大きかった。
「なんでまた齋藤が華と同じクラスなのよ〜!」
そう言いながらいつの間にかわたしの隣に来ていた亮を睨みつけた。
亮は殊勝な笑みを浮かべて月を見下ろした。
「残念だったけど、今年も俺の勝ち、だな。」
「俺の勝ちって何よ!斎藤ばっかりずるいー!」
「俺は中学3年間、一回も同じクラスになれなかったんだぞ!ずるくないし、当然のことだ。」
いつもの調子で言い争う二人にわたしはこっそりため息をついた。
その後は二人を適当に諌めて教室を出る準備をした。