あの日溺れた海は、
慌てて机の引き出しや鞄の中を確認するわたしを見た喬佳に少し引き気味に「ど、どうしたの?」と聞かれた。

わたしは必死になって「ない、ないの!原稿用紙がないの!」と叫ぶように返した。
それを聞いた部員たちは「「ええ!?」」と声を揃えて驚いた。



その後部室をくまなく探したけどどこにも原稿用紙は見つからなかった。


「もしかして窓が開けっぱなしだったから運悪く外にとんでっちゃったとか?」

そう言われて慌てて窓の外を見たけど、目で見える範囲には原稿用紙らしきものは見えなかった。


もしかしてまだ夢の中なの?と頬をつねってみたけど、しっかりじんわりと痛みが広がって今起こっていることは現実だということを再確認しただけだった。



もう今日中にでも書き終えられそうだったのに…。

これだけ部室を探しても見つからないということは、窓の外に飛ばされてそのまま遠くへ行ってしまったに違いない。


最悪な16歳の幕開けだ。


目に涙を浮かべながら呆然と窓の前に立ち尽くした。
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