エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 希望通りの大学に合格し、進学に伴い家を出る。

 さらに父同様アメリカでの弁護士資格を取得するためアメリカのロースクールへの留学を決めた俺は、実家に顔を出す頻度が極端に減ったが、帰国した際には必ず川内家を訪れ、日奈乃と会った。

 会うたびに、成長して綺麗になっていく日奈乃に驚かされる。

 元々顔立ちが整っていてくりっとした二重瞼の大きな目はなんとも愛らしく、表情をくるくる変える彼女は昔から見ていて飽きなかった。

 おそらく異性にもモテるのだろう。彼女の父親である武志さんは『嫁にやりたくない』とよく漏らしては、日奈乃の母親に呆れられていたが、少しだけその気持ちが理解できた。

 幼い頃から無邪気に大好きだと駆け寄ってきた彼女の眩しい笑顔が、そのうち別の男のものになるのだと思うとなかなか複雑だ。

 とはいえ、これはやはり兄としての感情に近いものだった。

 日奈乃が高校二年生の冬、クリスマス休暇で久しぶりに帰国した俺は両親と川内家を訪れていた。日奈乃はさっさと自室に退散し、親同士で話が盛り上がり始める。

『稀一くん、せっかくだから日奈乃に声をかけてやって。あの子、稀一くんに会えるのをすごく楽しみにしていたのよ』

 茶目っ気混じりに日奈乃の母親に促され、俺は彼女の自室を訪れる。
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