エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
『稀一くんにならきっといい弁護士さんになるよ。私が保証する』

 こうやって今も昔も日奈乃には背中を押されている。それは、彼女が俺自身をよく見て向き合ってくれているからだ。

 彼女をずっと妹として扱ってきたが、それは改める必要があるのかもしれない。進路に悩んでいたときの自分と同じ年になった日奈乃を見て思う。

『ただ、男を簡単に自室に招き入れる真似は慎んだ方がいい』

 さすがに彼氏の有無を不躾に尋ねる真似はできなかったが、別れ際に口うるさく忠告すると、彼女は唇を尖らせた。

『簡単じゃないよ。身内以外で入れる人は誰もいないし、稀一くんは特別なの』

 言い切る日奈乃に対し、俺は目を見張る。その特別とはどういう意味なのか。兄同然の存在だからなのか、それとも……。

 さりげなく日奈乃を抱き寄せると、案の定彼女は顔を真っ赤にして狼狽えた。

『な、なに?』

『ん? アメリカらしく別れの挨拶を示してみた』

 納得しきれていない日奈乃に微笑む。少しは自惚れてもいいのだろうか。

 さすがに彼女から抱きついてくることはもうないが、昔と変わらずに自分の後を追ってくれているのだと。

 また離れないとならないうえ、高校生の日奈乃相手にどうこうしようとするつもりはないが、確実に彼女に対する感情は変化した。
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