エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 今まで以上にまめに日奈乃とは連絡を取るようになった。彼女の進路や勉強の相談に乗るという名目で、たびたびやりとりする。

 地元の大学に進学が決まったと報告を受け、これでまた帰国したときに会えると安堵した反面、さすがに大学生になれば彼女にも恋人くらいできるだろうと覚悟する。

 なにか自分たちの関係を確実なものにする言葉をかけるべきなのか。

 迷っているところに、母から日奈乃の母親が病気で倒れたと連絡を受けた。病状も思わしくないという情報と共に。

 朗らかな日奈乃の母親の姿を思い浮かべ、信じられない気持ちと共に日奈乃のことが心配になる。こんなとき、そばにいないのはどうしようもなくもどかしい。

 ニューヨークで弁護士資格を取得し、しばらく滞在した後に帰国した俺は日本で弁護士としての道を歩み始めた。

 思った以上に忙しく慌ただしい日々の中で、時間を見つけ日奈乃に声をかけると彼女はいつも明るく振る舞った。

 本当は母親が心配でたまらないだろうに、たまに父親と川内家に顔を出せば『お父さんをよろしくお願いします』と武志さんを思いやる。

 実質的なサポートは日奈乃の母親と仲が良かったうちの母が買って出て、なにかと川内家に出入りした。

 そして二年前、日奈乃の母親が亡くなり、葬儀の間も日奈乃は武志さんを支えながら気丈に振る舞っていた。
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