エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
『日奈乃は昔からお前に惚れてるからな。うちの娘は、性格もいいし可愛いだろ。考えてやってくれ。なんなら俺から』

『今の話は聞かなかったことにします』

　失礼を承知で俺は言いきった。最後まで話を聞いたら、イエスかノーの答えを出さなくてはならない気がしたからだ。

　俺は武志さんに、誰かになにかを言われたから日奈乃と結婚したいと思っているわけじゃない。

　武志さんは苦笑を浮かべる。

『まぁ、お前の気持ちもあるからな。今日会っている結人にも念のため声をかけておくか』

『その必要はまったくないですよ』

　棘を含んで返し、続けて自分の意思を彼に伝えようとしたが、そこで父が戻ってきたのでこの話題は終わった。

　そもそも当人を無視して話を進めるわけにはいかない。日奈乃の気持ちを一番大切にしないと。

　昔から純粋すぎるくらい真っ直ぐで、人への気遣いを忘れない。そんな彼女の意思をちゃんと尊重したい。

　外堀から埋めるのも重要だが、まずは日奈乃自身と向き合う必要がある。

　そう思いつつ仕事が忙しいうえ、相変わらず日奈乃も素っ気なかった。嫌われているほどではないが、あきらかに距離を取られているのがわかる。

　誰かと付き合っている素振りもないし、武志さんにもそんな相手はいないと言いきっているらしい。もしかすると誰か想い人がいるんだろうか。
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