エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 ゆっくりと肩を抱かれ、そのまま彼のご両親に結婚の報告をしに行く。伝えるなら私の父が先だと彼なりに気を使っていたらしい。

 そういうところ、律儀というか真面目というか。

 とんとん拍子に話は進んで、結婚指輪を一緒に見に行き、ひとまず入籍を先に済ませてから彼の住むマンションで新婚生活は始まった。

 父が退院し、落ち着いたら結婚式を考えようとは話しているけれど、私としてはあまり結婚式に強いこだわりや憧れがあるわけでもないのでとくに要望はない。

 それよりも大好きな相手と結婚する事実に舞い上がっていた。

 そして引っ越し当日、いわゆる初夜。お風呂に入って寝支度を整え緊張しながらベッドで彼を待っていた。

 ベッドが別々なのは寂しくもあり、安堵した一面もあった。心臓が痛むほど激しく打ちつけ、ベッドの端に座って思考も態度も落ち着かない。

『寝ていなかったのか?』

 寝室に現れた稀一くんは、寝ずにいた私を不思議な面持ちで見つめてくる。驚かれるとは思ってもみかったので、逆にまずいことをしたかと恥ずかしくなった。

 彼は狼狽する私の隣に腰を下ろし、優しく頭をなでてきた。

『疲れているのに無理して俺を待たなくても』

『無理してない! 私が待ちたかったから待ってたの!』

 反射的に答えて稀一くんが目を丸くする。

 もしかしてあからさまだった? 彼の負担になってる?

 内心慌てふためいていると、彼の指先が私の頬に触れた。ドキリと意識したのとほぼ同時にすぐそばに稀一くんの整った顔があった。
< 17 / 120 >

この作品をシェア

pagetop