エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 不安に覆われる間もなく、私の視界は再び変わり意識はそちらに集中する。背中にベッドの柔らかい感触を受け、天井が見えたのは一瞬、すぐに私を見下ろす稀一くんに目を奪われる。

 そして、寝かされたのは隣にある自分のベッドではなく彼のベッドだと気づき、心臓が一層、早鐘を打ち出した。

 稀一くんは遠慮がちに私の頭を撫でる。いつになく真剣な表情の彼に呼吸を止めてしまいそうだ。ややあって彼の形のいい唇が動く。

「そんな怯えた顔をしなくていい」

 予想外の言葉に私は目を見開いた。

「お、怯えてない! ただ、その、なんの準備もしていないから……」

「準備?」

 しどろもどろに答えると稀一くんは不思議そうな面持ちで尋ねてくる。

「こ、心構えとか?」

 この後の流れは私の予想するものなのか、それさえもわからない。キスよりもっと先に進みたいと思う反面、未知の世界に対する不安もある。

 様々な感情が入り混じって自分でもどうしていいのかわからない。

 稀一くん、呆れたかな?

 そのとき私の心配をよそに彼は小さく噴き出した。くっくっと喉を鳴らして笑いを噛み殺している。

「ど、どうして笑うの?」

 大真面目だったのに。おかげで張り詰めていた空気が溶け、いささか緊張が緩む。こうなると観念するしかない。

「ごめん、なさい。全部初めてだから、どうしたらいいのかわからないの。私、稀一くんと違って経験も知識も全然足りなくて……」
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