エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 これは稀一くんの結婚相手としても言える話だった。こんな私と結婚して稀一くんはよかったのかな?

「日奈乃は、そのままでいい」

 私の心の内を否定するように彼は静かにはっきりと言い切った。

「そうやって素直でまっすぐなところに俺はいつも救われているんだ」

 穏やかな笑顔に私の心がふっと軽くなる。違う、きっと救われているのは昔から私の方なの。小さく微笑み返すと、稀一くんは私の頭を撫でながら額に口づけを落とした。

「で、心構えができるのをもう少し待つべきなのか?」

 今度の尋ね方は少しだけ意地悪だった。だから私もつい唇を尖らせ質問に質問で返す。

「待ってほしいって言ったら待ってくれるの?」

「待つよ。日奈乃が望むのなら。俺にとって一番大事なのは日奈乃の気持ちなんだ」

 即座に真剣な回答を返され、胸の奥が熱くなる。

「好き」

 自分の気持ちを伝えたいのに、これ以上の言葉を知らないのが悔しい。もっと気の利いた言い回しをしたいのに。稀一くんは私の頬に手を滑らせ、おもむろに親指で私の唇をなぞる。

「本当に?」

「うん」

 神妙な顔で問いかけられ私は頷いて肯定した。続けて唇が重ねられる。

「ん、なら、もう遠慮しない」

 遠慮、していたの? 

 聞き返そうとするもすぐにキスで口を塞がれ声にならない。すぐにその疑問はどうでもよくなってしまうほどに甘く蕩かされていく。

 やっと彼のものになれる嬉しさで胸がいっぱいになった。
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