エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
「そっちは俺がいない間、どうだった?」

 彼に質問され私は慌てて稀一くんの顔を見る。

「相変わらずだよ。職場と家の往復で、ときときお父さんのお見舞いにも行って」

 そこで私は父の退院の目途がついたことを話した。すぐにいつも通りとはいかないが、大きな進展だ。

「よかったな、ひな」

 稀一くんは心底安心した顔を見せる。本当に彼にはたくさん心配させて、迷惑もかけた。稀一くんがいなかったら、私はとっくに精神的にも体調的に参っていただろう。

「うん」

 本当に彼には感謝している。だから…… 。

「日奈乃?」

 どことなく生返事だったからか、不思議そうに名前を呼ぶ稀一くんに、私は一度唇をきつく噛みしめ意を決した。

「稀一くん……離婚しよう」

 あまり大きい声ではなかったが、はっきりと言えた。彼を直視できず、頭を垂れた状態で、その後は重い沈黙が辺りを包む。

 急激に口の中が渇き、心臓がドクドクと激しく脈打ちだす。彼はなんて答えるの?

「どうした突然? あまり面白くない冗談だな」

 降ってきたのはあまりにもいつもと変わらない冷静な彼の声だった。おかげで思わず顔を上げ、即座に噛みつく。

「冗談じゃない。私は本気なの!」

「本気で俺を驚かせてみようと?」

「違う。その本気じゃない!」

 もしかして真面目に言っているって受け取ってもらえていない?
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