エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 なにかにあたったのか考えを巡らせるが、今日は朝昼兼用で軽くパンを食べただけだ。しかも食欲がなかったのであまり量も食べていない。

 ひとまず少し落ち着き、トイレから出て口をゆすぐ。

「大丈夫か?」

 するとリビングにいたはずの稀一くんが厳しい表情で、廊下で待っていた。

「日奈乃。とりあえず病院に行こう」

「だ、大丈夫。病院に行くほどじゃないよ」

 車の鍵を手にしている稀一くんを慌てて制する。しかし彼は納得しない。

「どうして断言できる? 顔色も真っ青でどう見ても健康とは思えない。なにかあってからじゃ遅いんだ」

 怒っているのは私を心配しているからだ。それがわからないほど鈍くない。私も彼も、我慢や無理を重ねた結果、倒れた父を目の当たりにしている。

「じゃぁ、ひとりで行ってくるよ。今日は平日だし。稀一くん疲れているでしょ? 休んでて」

 なんとか笑顔を作って答える。近くに内科、外科、耳鼻咽喉科、眼科、歯科など個人経営のクリニックがいくつも入っているメディカルビルがあり、ここなら間違いないだろう。

 しかし、稀一くんはなにも言わず私の肩を抱いた。

「そんな状態の日奈乃をひとりで行かせられるわけないだろ」

「でも」

 おそらく病院の内科で診てもらっても吐き気止めか整腸剤が処方されるのが精々だ。付き添ってもらうほどではないとわかっているので、稀一くんに申し訳ない。
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