エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 父が倒れた辺りから生理周期が乱れて不規則になり、父と稀一くんとのやりとりを知ってからは、あれこれ思い悩んでこの症状もストレスとばかりに思っていた。

 でも、もしも妊娠しているのだとしたら……。

「えっと、あの……まったくないとは言えませんが」

 たどたどしく答えると、胃のムカつきに加え、今度は心臓まで痛みだした。

 先生によると内科では妊娠の検査ができないので、気になるのなら同じビルに入っている婦人科系専門クリニックで検査することを勧められた。

 結局、内科では万が一の場合を考慮し、妊娠中でも飲める漢方を処方された。つわりの症状の緩和にも効くらしい。

 内科を後にして、私はしばらくエレベーターの前で動けなかった。さっきから心臓が暴れるようにずっと激しく打ちつけている。

 この後の身の振り方をしばし悩み、エレベーター横のビルの案内図を見つめる。

 どうしよう。でもまだなにも決まったわけじゃないし……。

 内科の先生からは市販で売っている妊娠検査薬の方が料金的にも安いし、お手軽だよというアドバイスをいただいた。

 いつもの私なら、先生の言う通りにしたと思う。でも今は自分の中で一刻も早く白黒つけたい気持ちが背中を押した。

 稀一くんに、もうしばらくかかりそうだと謝罪付きでメッセージを送り、やってきたエレベーターに乗り込む。

 目指すは一階のビルのエントランスではなく婦人科系専門クリニックが入っている階だ。
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