エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
「どうだった? 思ったより時間がかかったが、混んでたのか?」

 どこか現実味が湧かないまま車に戻ると、稀一くんが矢継ぎ早に尋ねてきた。

「待たせてごめんね」

「いいよ、先生はなんて?」

 まっすぐな眼差しを私に向け、切羽詰まった表情を見せる。彼の心配を早く払拭しないと。

 しかし私は一度稀一くんから目を逸らし、言葉を迷った。

 これはさっき離婚を切り出したときと同じか、それ以上に緊張してしまう。でも言わないわけにはいかない。

「あの……実は妊娠していたみたい」

 私の告白に稀一くんは目を丸くして、硬直した。どうやら彼も予想していなかったらしい。

 内科とは違い、婦人科系は基本予約制なので飛び込みの私は、受付でやや渋い顔をされた。

 ただ、そこまで予約が混んでいない時間帯だったのと内科での経緯を話したのもあり診てもらえる流れになった。

 逆に妊娠していなければ、この吐き気の原因を改めて探らないとならない。

 妊娠三ヶ月。慣れない内診に苦戦しつつ先生にエコーを見ながら説明され、自分の中に宿る新しい命にまずは驚き、次に涙が出そうなった。

 小さな姿で懸命に心臓を動かしている姿に愛しさが込み上げてくる。
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