エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
  帰宅するや否や、稀一くんから横になるよう指示され、私は苦笑する。どう考えても休む必要があるのは彼の方だ。

「稀一くんこそ休んで。吐き気も治まったし、私は大丈夫だから。」

 胃の不快感は消えないが、妙にすっきりしていて、嘔吐する気配は今のところない。本当にあの一回だったのか。念のため、内科で処方してもらった漢方もとりあえず飲んだ。

 不調の原因がはっきりしてホッとしたのもあるのかな。

 むしろソワソワ落ち着かず不思議な感じだ。私は意識を切り換え、稀一くんに問いかける。

「稀一くん。久々の日本だし、食べたいものや欲しいものとかある?」

 一応、和食をメインに作りおきや下ごしらえはしている。でもピンポイントで希望があるなら聞いておきたい。 

「日奈乃」

「なに?」

 名前を呼ばれ、首を傾げる。

「日奈乃が欲しいんだ」

 あまりにも臆面なく告げられたので、すぐになにを言われたのか理解できなかった。

「え?」

 反応する頃には、目の前に稀一くんの姿があり、正面から抱きしめられる。

「ベッドに行こうか、奥さん」

 耳元で甘く囁かれ、あれこれ思い悩んだものの私はおとなしく彼に従った。
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