エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 背後から抱きしめられ、密着した背中から体温が伝わってくる。

 心地よさに微睡みそうになる一方で、胃液が逆流してくる不快感に眉をひそめた。

「……本当に寝るだけなんだ」

「不満か?」

 唇を尖らせたひとり言には、返答があった。彼の顔は見えないけれど声からして、おかしそうに笑っているのが想像できる。

 とっさに否定しようとしたら、そっと頭を撫でられ、前に回されていた手は腹部に添えられた。

「さすがに今の状態の日奈乃に手は出せないな」

「そういう意味じゃなくて、その、この体勢は、稀一くんがゆっくり休めないんじゃないかって……」

 結局、私も彼のベッドで一緒に横になっているが、本当にそれだけだ。

 おそらく私を休ませるためなのだろう。上手く稀一くんに乗せられてしまったが、これでは彼がくつろげない気がする。 

 寝るだけなら、私がいない方が……。

「手は出せなくても、こうして日奈乃には触れていたいんだ」

 回されていた腕の力が強くなり、打って変わって真剣な声色が耳に届く。

 心臓がドクドクと音を立て存在を主張しだした。

「ひなは嫌なのか?」

 私は小さく首を横に振る。
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