エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
「悪い、調子に乗りすぎた」

 何度か瞬きを繰り返し、完全に稀一くんのほうに体を向けると、私は彼に抱きついた。

 浅い呼吸を繰り返し、荒れた胃と早鐘を打つ心臓を落ち着かせる。慣れた彼の匂いに安堵していたら、稀一くんはおずおずと私の頭に手を置いた。

「……日奈乃?」

 心配そうに尋ねられ、私は顔を上げる。

「私ね、稀一くんが好き。ずっと大好きだから」

 今までの気持ちも含め、宣言する。稀一くんは虚を衝かれた顔をした後、柔らかく笑った。

「光栄だよ、お姫さま」

 そっと額に口づけが落とされ、改めて稀一くんと視線が交わる。心なしか彼が迷っているように見えて、せがむように目を閉じると唇が重ねられた。

 思ったよりも素早く離れられ、目をぱちくりさせ彼をみたら稀一くんは困惑気味に笑う。

「これくらいにしておかないとさすがに止められなくなる」

 そのまま彼の腕の中に閉じ込められた。

「今度、病院に行くときは、できればついていくから先に教えておいてほしい。極力空けるから」

「……うん」

 優しくてこんなに私を思ってくれる人は他にはいない。

 大丈夫。稀一くんも、この子もきっと幸せにしてみせるから。

 彼の規則正しい心音と温もりが眠気を誘う。私はおもむろに目を閉じた。
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