エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
「北アフリカの企業進出の件でちょっと難航しているみたいなの。アジアにはずいぶん日本の弁護士も浸透してきたけれど、それに比べてアフリカはまだ遅れをとっているところがあるから」

「そう、なんですか」

 初めて聞く話に私は目を丸くした。

「逆に言えば、この案件を成功できたら彼の国際弁護士としてのキャリアアップは間違いないと思うの」

 森崎さんは興奮気味に説明する。

 国際弁護士、とくに稀一くんみたいに異国との契約に関して間に立つ場合はその国の法律や言語を事前に知っておくのは当然だが、それ以前に法律自体が日本と大幅に異なる場合やその国の文化や宗教なども絡んでくるので、知識や英語ができるだけではどうしようもない問題が多々あるのだと聞いたことがあった。

「私、大学のときにモロッコに留学した経験があって、わりと似た案件を扱うことがあるか、それで彼と何度かやりとりしているの」

 森崎さんがわざわざ補足してくる。さすがに異性だろうと仕事関係でやりとりするのに嫉妬するほど私も子どもじゃない。

 それに彼女は快活でお喋りが好きな印象はあるものの稀一くんに対してどうこうという感じはなんとなくしない。

 森崎さんは内緒話でもするかのようにやや声のトーンを落とした。
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