エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
「彼ね、学学生時代からものすごくモテていたんだけれどすごくストイックで、振られていく女子が後を絶たなかったの。で、久しぶりに同期で集まったときに昔話で盛り上がってそのノリで『間宮って恋愛や結婚願望ないの? そもそもどんな女性が好みなの?』って質問されたとき彼は『結婚は、自分という人間をしっかり見てくれる女性とするつもりだ』って言いきって。日奈乃さんはそんな相手だったのね」

 笑顔の森崎さんに対し私の表情は凍りついた。すぐに視線を落とし、動揺を抑え込もうと躍起になる。

 待って。だって私……。

「それに、年末だったかしら? ニューヨークの事務所で何年か経験を積まないかって話があったらしいの。けれど彼、結婚するからって断ってね。ニューヨーク州弁護士の登録手続きをしているから、彼もある程度、あちらで実務経験をするつもりだったと思うんだけれど」

 森崎さんはもったいないと怒り口調になったが、すぐさまそれを収め「でも結婚はお互いのタイミングがあるからね」と結論づけた。

 なんて答えればいいのか頭が回らない。初めて知る情報に思考どころか気持ちも追いつかない。

「悪い、待たせたな」

 そのとき戻ってきた稀一くんに私と森崎さんの意識は持ってかれる。電話の件で、稀一くんと森崎さんは仕事の話を始めた。

 当然、私はついていけない。時間にするとそんな長くはなかったのに、私には稀一くんがものすごく遠く、言い知れない孤独感に包まれていた。

 森崎さんと別れて、私たちも帰路につく。稀一くんは変わらずに優しくて、左手に荷物を持ち、右手を私と繋いで私のペースに合わせて歩いてくれる。

 有り難い気持ちの一方で、気分はどんどん悪くなり、帰りの車の中で私はほぼ喋ることができなかった。
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