エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 家に帰ってベッドに横になり、何度も寝返りを打つが吐き気は軽減されない。おまけに頭痛までしてきて、薬が飲めない今の状況がつらくなる。

 稀一くんは部屋で電話をしながらパソコン画面と睨めっこをしていた。やっぱり忙しかったんだ。森崎さんの話と合わせて、胸が苦しくなる。

『結婚は、自分という人間をしっかり見てくれる女性とする』

 昔から彼に憧れを募らせていたとはいえあくまでも一方的なもので、私は稀一くんの抱えているものや苦労などほとんど知らない。

 いつも支えてもらってばかりで、彼をしっかり見て、支えている自信もない。

 現にニューヨーク行きの話があったなんて全然知らなかった。結婚するからって……断らせたのは私のせい? 父があんな状態だから言い出せなかった?

 改めて突きつけられたのは、やはり私との結婚に彼の気持ちや希望なんてひとつもなかったという事実だけだ。

 ぐるぐると負の感情が渦巻いてお腹も胸も頭もなにもかもが痛い。

『稀一くんは、私と結婚してよかった?』

『毎朝、律儀に起こしに来て、いつも帰りを待っていてくれている。料理上手な日奈乃には、感謝しているよ』

 あのときの稀一くんの答えが頭に引っかかっていて、小さなわだかまりがこんな大きくなるとは思わなかった。

 だって今、私は奥さんとしてまったくだめで、彼が私と結婚してよかったと思う要素がなにもない。

 どうしよう。頑張るって、決めたばかりだったのに。夫婦なのに私は稀一くんの負担ばかりになっている。不安な気持ちが自分の首を絞めていく。
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