エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 長い間、胸に刺さっていたものが言葉になって次々と吐き出されていく。

「結婚しても、子ども扱いが抜けなくて、一線引かれているのを感じてた。ずっとベッドも別で、なかなか関係が進まなかったのは、私を好きじゃないからで」

「違う」

 一方的に捲し立てていた私に稀一くんが静かに口を挟んだ。

「好きじゃないのは、日奈乃の方だと思っていたんだ」

 意外な切り返しに頭がついていかない。

 どういうことなの? むしろ私の気持ちは小さい頃から稀一くんにバレバレで、でも彼からの扱いはずっと変わらなかった

 目を瞬かせる私に、稀一くんはやるせなさそうに顔を歪める。

「武志さんが倒れて弱っている日奈乃につけこんで、俺が強引に結婚を進めたから……」

 ようやく彼の言わんとしていることが理解でき、それと同時に否定したい気持ちに駆られた。

「そんなふうに思ってない。私、稀一くんと結婚できて嬉しかったよ」

「ん。俺もそう伝えなかったか?」

 ところがすぐさま彼に返され、言葉を詰まらせる。たしかに彼は言っていた。

『稀一くんは、私と結婚してよかった?』

『もちろん』

 でも、その内容は起こしてくれるとか料理とか、どこか表面的なものばかりで、私じゃなくてもいいような気がしていた。

 言い訳するみたいにもごもごと返すと稀一くんは、私の頭をそっと撫でた。
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