エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 稀一くんは苦笑して私の頬に手を添え、親指で私の唇をゆっくりとなぞりだす。

「それに、これ以上していたら歯止めが効かなくなりそうだ」

 彼の発言に体温が上昇し、頬が熱くなった。

 この後、おとなしくバスタブから出た私は、髪さらには体まで稀一くんの手で丁寧に洗われるはめになるとは思ってもみなかった。

 断る選択肢など最初から与えられず、稀一くんにされるがままで、たっぷり甘やかされる。こっちのほうがお風呂に浸かっているよりも絶対にのぼせ上がった原因だ。

 ベッドに横になり、私は大きく息を吐いてお腹に手を当てた。

 現金なもので早く終わってほしかったつわりがいざなくなると、今度はおなかの赤ちゃんが大丈夫なのかと心配になってくる。

 胎動を感じるのはまだ先だろうし。

 そもそもまだお腹がまったくといっていいほど膨らんでいない。とくに初めての妊娠のときはそう珍しいわけでもないそうだけれど……。

 あれこれ考えて寝返りを打っていたらドアが開く音がして私は反射的に体を起こした。

「体調は?」

「大丈夫だよ」

 心配した面持ちの稀一くんが現れ、私は微笑んだ。彼は真っ直ぐにこちらに近づいてくる。

「まだ仕事する?」

「いや、今日はもう休むよ。抱えていた案件が一区切りついたんだ」

「そっか、お疲れ様」

 ホッと胸を撫で下ろすと稀一くんの手のひらが頭に置かれた。そこで私は気になっていたことを質問する。
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