従者は惜しみない愛を捧げる―――流浪の落ち延び姫と双頭の獅子
「長く、つらい旅……そう言いましたね?」
「申しました」
「では、リナルド。どうかわたくしを助けてください」

 アマーリアは背筋を伸ばし、跪くリナルドの方へと歩き出した。

「それは……もちろんでございます」

 主の言葉が意外だったのだろう。リナルドが怪訝そうな表情で立ち上がる。

「リナルド」

 アマ―リアは忠実な従者の前に立つと、おずおずとその手を取った。
 武具を扱い続け、皮膚が厚く、硬くなった手。

「……アマーリア様?」
「もしもまだ時間があるのなら、わたくしに思い出をくれませんか? これから何があっても、乗り越えられるように」
「思い出?」

 アマ―リアは大きく息を吸うと、リナルドをまっすぐ見つめた。

「お願いです、リナルド。わたくしの純潔を散らしてください」

 瞬間、緑の瞳が見開かれ、傷痕の残る白い頬に朱が差した。

 今、互いの顔は息がかかりそうなほど近くにあった。
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