従者は惜しみない愛を捧げる―――流浪の落ち延び姫と双頭の獅子
 夜半、アマーリアはそっと身を起こし、静かな寝息をたてているリナルドを見やった。

 警備も担う彼が無防備に寝入ることなど、本来はありえない。
 しかし寝台に入る前に、二人で乾杯した酒に薬が入れてあったのだ。万一に備えて隠し持っていたもので、アマーリア自身はずいぶん前から身体を慣らしていたため、口にしても眠気は覚えなかった。

 リナルドを見つめる青い瞳は困惑に揺れている。

(やはり、あなたは……)

 彼の下半身には寝具がかけられていたが、線画のような朱赤の刺青がわずかにのぞいていた。

 ひとつの身体に備わった、それぞれ反対方向を向く二つの獅子の顔。

 ――絶対に忘れてはだめよ、アマーリア。双頭の獅子はとても危険なの。

 レマルフィには開国以来、秘密裏に王家に仕える騎士たちがいる――姉のカタリーネと一緒に、父王からその事実を聞かされたのは、城を落ち延びる少し前のことだった。

 ――彼らは絶対の忠誠を誓っていて、何があろうと国王に従う。たとえ自分の子を殺せと言われても、迷うことなく刃を向けるのだ。味方として、これ以上の存在はおるまい。ただし王が代われば、話は別だ。もしかしたら内心思うところはあるかもしれないが、彼らは即座に新国王に跪く。
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