猫を拾った
「お前は、あの大学は楽しかったのか」


「......いえ。名門だということだけで選びましたから」


「そうか」


「...思ったより、味気ない学生生活だった気がします」



そういうと、アキさんがそうか、とまた言う。

彼は頷く時、うんではなく、そうか、あぁの二択くらいで頷く。



「俺は中卒で今のとこで働いてる。...学生生活なんざ、終わってしまえばどれも一瞬だ」



大学に行こうが行かまいが、終わってしまえば結局は一瞬で終わる。

始まりは長い、終わりは短い。


確かに、大学4年間を通い脱いたとしても、義務教育から数えると16年しかない。

これから先もっともっと生きることを考えると、確かに短い。


アキさんなりの励まし方なんだな、と少し思って、心がじんわりと温まっていく。



「...もうひとつ、聞きたいことがあるんです」


「なんだ」


「......父は死ぬ直前、何か言いましたか」



アキさんは何も言わなかった。
それは無言の肯定にしか見えなかった。

言ったことは認めても、内容は言えない。

そう彼は言っているようで、少し残念だなと感じる。


父の最期を知りたかった。
私は再び、父と幼い頃から関係を構築しなかったことを悔やんだ。
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