御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
そんな私の心配をよそに彼はそのまま第一展望台に降りて展示されている写真などをフランス語が分からない私のために訳してくれた。

しかし、フランスが大好きというわけではないのでこれと言った感銘もなくとてもそっけない相槌(あいづち)しか打てなかった。

まさに豚に真珠状態だ。

そんな私に気付いたのか彼は通訳をやめ、ある通路の一画に私を連れて行った。

「これもいい経験ですよ」

そう言って彼は足元がガラス張りのエリアに足を踏み入れた。

第三展望台に比べたら屁でもない高さだが、それでも結構な高さだ。

「さぁ、早く」と彼に急かされても私は一歩たりとも前に進もうとはしなかった。

ジーンズを履いているのでスカートだから恥ずかしいとかいう可愛い女子的発想で踏み入れない訳ではない。

体中の細胞が危険を察知して足や手の筋肉を震わせている。

おそらく高所恐怖症。

診断してもらったわけでもなく、高くなくとも不安定な場所や平均台などでも足が震えるので怖がりなだけなのかもしれないが、どちらにしてもこんな所はできるなら歩きたくない。
< 17 / 129 >

この作品をシェア

pagetop