御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
確かに食べた量からして数千円では済みそうにないが、今日は1万円を稼いでいてホテルの最寄り駅までの交通費しか出していないので1万円くらいなら出せる。

1万円ってユーロでいくらだ? と考えていると彼が取り出したカードが見えた。

色が黒い。

黒いカードなんていくら大手ホテルの従業員と言えど、マネージャークラスが持てる代物ではないだろう。
きっとカードのデザインだと思いながら私は再び1万円をユーロ換算し始めた。

スマホもなければ計算機もないので、暗算ができない私はテーブルの上に10000÷と指でなぞり書きし始めた。

「汚れでもつきましたか? 気にしなくて大丈夫ですよ」

「あ、いえ。1万円って何ユーロでしょうか?」

理数系の弱い私は自分の頭を信じず、彼の頭を信じることにした。

彼が暫く黙ったので同じ文系で計算が苦手なんだなと共通点を見つけたことに少し喜ばしく思っていたのだが違ったようだ。

「もしかして、今日のお給料分を私に支払おうとしていますか?」

バレバレだったようだ。

「えっと、はい。今日はほとんどお金使っていませんのでそれくらいなら出せるかと」
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