御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「よく考えてください。両替してきたお金からその金額が無くなるのですよ。足りなくなればまた両替が必要になります。手数料や為替によるマイナスを考えればユーロではなく、円で支払った方が良いとは思いませんか?」

言われてみれば確かにそうだ。彼の名刺に書かれた住所は日本国内にある本社の住所だった。

同じ部署でなくてもお金を返しに行くことくらいはできるだろう。

「では、日本に帰った時にお返しいたします」

「そうですね。日本に帰ったら仕事でお返しいただければ十分です」

私が仕事を頑張ったからと言って彼に直接返ってくるわけではないが、これ以上話を長引かせるのは良くないと思い、「すみません。ありがとうございます」と頭を下げた。

食事が終ってもパリの夜は明るく、観光がてら私達はライトアップされたルーブル美術館を横切るコースで1時間かけてホテルまで歩いた。

終始無言だったがそれもこのパリの夜では大人な男女二人の素敵な時間とさえ思えた。

恋の都パリで美しい男性と一緒に歩いていてそんな妄想をしても罰は当たらないだろう。

ホテルに着くと彼はフロントから私の部屋のカードキーを受け取り、「ではまた明日。ご準備できたらご連絡ください」と言ってカードキーを手渡してくれた。
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