御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「すみません」

私はいつの間にか彼の肩を枕代わりにして寝ていたらしい。

「気にしないでください。でもお一人で出歩くときは眠らないでください」

彼はずっと一人で起きてくれていたのだろう。
同じくらいの時間に起きたはずなのに、疲れも見せず、表情一つ変わらない彼に私は彼をアンドロイドか何かではないかと思い始めていた。

「まずはホテルに戻ります」と言って彼は立ち上がると颯爽と歩き始めた。

私も迷子にならないよう彼の後ろにべったりと張り付き、ホテルまで戻った。

「お部屋にドレスが用意されておりますのでお好きなドレスを着てきてください。そのまま夕食に参ります」

「ドレス、ですか? もしかして仮面舞踏会とかですか?」

ここはフランスだ。そういうイベントがあってもおかしくない。

「私は夕食と言いましたが、どうしたらそういう発想になるのでしょうか」

「すみません」

確かに夕食と言われていたが、そもそも仮面舞踏会にだって軽食は用意されているだろうし、そんなに呆れた口調で言う必要はないじゃないかと思いながら渡されたルームキーを受け取って部屋に戻った。

部屋に入るとリビングにラックが置いてあり、そこにはイブニングドレスがかけられていた。
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