御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
証拠隠滅するにはそれしかない。
私は不自然に思われないように頑張って演じてみたものの、慣れない演技はすぐに見破られた。

「何か入っていましたか?」

彼に言われ、私は目を泳がせてしまった。

どうか、大事(おおごと)にしないでください。

「そうですか。それは良かったですね」

ん? 良かった? 
つまり彼は画策し、意図的に異物混入させ、このレストランを乗っ取る気なのだろうか。

「神岡さんが王女様です。おめでとうございます」

何を言われているのかが分からない。
王女様? おめでとうございます? 私が首謀者のようじゃないか。

皆さん、私は違いますよ。何も知りませんでした。

むしろ私は証拠隠滅して助けようとした市民です! と心の中で訴えていると彼は淡々と説明を始めた。

「ガレット・デ・ロワにはフェーヴという小さな陶器が入っております。それを当てた人がその日の王子様もしくは王女様になるのです」

つまり、この異物は意図して入れた異物で、そういう文化であり、問題になるようなものではないという事か。

フォークが当たった付近を砂山を削るような感じでケーキを取り除いていく。

すると可愛い小さな花束の陶器が出て来た。花びらの形や赤く塗られていることからおそらくバラの花束だろう。

「一説にはその1年幸福がもたらされるとも言われています」
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