御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
思いもよらぬ変化球。
このままでは私が彼をハニートラップにかけたと勘違いされてしまう。

「入れていません。神に誓って」

「では、冷静に判断し、そう対応するのがベストだと感じたからでしょう」

「私を好きだとかいう感情は全くないという事ですよね。それなら結婚で責任を取るというのは間違っているのではないでしょうか?」

「示談金をご所望でしょうか?」

「いや、そういうわけではないのですが」

「では話は早い。結婚致しましょう」

何故そうなる。何故この人はこうも結婚にこだわるのだろうか。

「結婚は好きな人とすべきです」

「と申しましても好きな人ができるとは思えません」

「あの、本当に人を好きになったことはないのでしょうか?」

「そうですね。家族や友人、取引相手などへの好意はあります。でもそれらは恋愛における好きとは違うようです。どのような感情が恋愛における好きかはまだ分かりません」

「ずっと一緒にいたいとか、一緒にいて疲れないとか、笑いのツボが合うとか、一緒にいて幸せだとか、なんでもいいんです。いつの間にかその人のことを想ったり、一緒にいることが当たり前になったりとか、他とは違う特別な何かを」

そう言ったところで疑問が生じた。
特別な何かを感じ、好きになったとしてもそれが永遠に続くなんてあり得ない。
結婚を決める理由にはならないだろう。じゃあ人は何故結婚をするのだろうか。
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