S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
問題はそこだ。
いつかみんなの耳に入るのはわかっていたが、こんなにも早いとは想定していなかったため心の準備が全然整っていない。――結婚も似たような状況だけれど。
騒然とした所内のあちらこちらから好奇の目を向けられ、菜乃花は顔を上げて歩けなかった。好意的なものならまだしも、なかには〝どうしてあの子が〟というものもわずかながら混じっているのがつらい。
妹として認定されていたため、裏切られたように感じている人もいるはずだ。
「だけど、収まるところに収まったなって私は思ったよ」
「え? どうして?」
オムライスを運んできたスタッフに「ありがとうございます」と返しつつ、里恵に問いかける。
「赤の他人が七年近くも一緒に暮らしていたら夫婦も同然じゃない?」
「そう、かな……?」
それらしい雰囲気はまるでない。
「これまでなにもなかったのがおかしいくらい」