S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

口応えのつもりだったのに朋久が目を泳がせるから、次の出方に困る。


「……なんかいい匂いがする」


不意に朋久は鼻をクンクンとさせた。


「あ、うん。一応記念日だから腕によりをかけました」


話を逸らされた気もしたが、ケーキの争奪戦はひとまずおいておき、菜乃花はキッチンに、向かってパタパタとスリッパの音を響かせる。見て見てと朋久にチラシ寿司の器を持ち上げた。


「お、うまそうだな」
「それから煮物も茶碗蒸しも」


上手に描けた絵を自慢する子どものようにニコニコ顔で腕自慢する。


「すごいご馳走だな」
「でしょう? がんばっちゃった」
「早速食べよう。手洗ってくる」


咄嗟だったのか、朋久は手にしていたケーキの箱を菜乃花に手渡した。
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