S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

朋久に同意してなんともないふりを決め込むが、内心ドキドキ。左手に体じゅうの全神経が集中して歩き方がぎこちなくなる。
右手と右足が一緒に出るほどではないが、ペタペタとペンギン歩きのようになり可憐な大人の女とはかなり程遠い。


「それでなにから乗る? いろいろ調べてただろう?」
「ばれてたの?」


ここは高校生のときにクラスメイトの友人と来たきり。あれからなにか変わったかもしれないと、ここ数日スマートフォンでネットリサーチしていたのに気づかれていたとは。


「覗き見た」
「ええっ!」
「気づかない菜乃が悪い。でも楽しみにしてくれていたのならなによりだ」


リサーチしていたときの自分を思い返してギクッとする。ウキウキワクワクしていたのは身に覚えがある。うれしさを隠しきれず、遊園地をふたりで歩く画を想像して頬が緩んでいたのも。


「……朋くんと遊園地に来られるなんて思いもしなかったから……うれしかったの」
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