S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
キスをしてからの約一週間、少しずつ彼女との距離を縮めにかかっているが、菜乃花から戸惑う空気を感じるため、今一歩強引にいけずにいる。
とはいえ、このままでいるつもりは朋久にもちろんあるはずもなく、菜乃花を振り向かせる気概だけは十分にあった。
「ふたりの孫の誕生が待ち遠しいな」
浩平が顔を綻ばせるが、朋久にとってその段階はまだ先の話。まずは菜乃花を手に入れなくてはならない。
「そろそろ本題に戻りませんか、CEO」
話を切り替えるべく、仕事口調で先を促す。
「あぁ、そうだな。じつは懇意にしている友人の会社からの相談なんだが、それを朋久に担当してもらおうと考えている」
「どういった案件で?」
「退職者が在籍中の顧客情報を用いて、他社で営業していることが発覚したそうなんだ。だが、退職後の秘密保持義務や就業避止義務を課していないそうでね」
「ですが、その行為が不正競争防止法2条7項に定める営業秘密の漏洩好意を伴う場合は、当該漏洩行為の差止や損害賠償などを求められるのでは?」