S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

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デスク周りを片づけ、パソコンをシャットダウンする。
今日はホワイトデーのため、城下と約束があるらしい里恵とはデスクでお別れし、菜乃花ひとりエレベーターに乗って階下に向かった。

(ホワイトデーだけど、朋くんからは特別なにも言われてないし、私たちはいつもと変わらない夜だろうな)

朋久がバレンタインデーに大量にもらったチョコレートのお返しは、彼に頼まれて菜乃花が有名な高級焼き菓子をネットで注文していた。今日は朋久がそれを配り歩く場面に何度か遭遇している。

『菜乃の分も一緒に頼んでいいぞ』と言われたため、自分にもみんなと同じお返しなのかとちょっと落ち込んだ。

(でも仕方ないよね。本当の夫婦じゃないんだもん)

そう割りきる以外になく、気持ちを切り替えてエントランスを出る。――とそこで、見知った人が立っていた。


「よっ」


軽く手を上げ、菜乃花のほうに近づいてくるのは充だ。
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