S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「聞こえないようだからもう一度言おう。菜乃と俺は夫婦だ」


迷いも戸惑いもいっさい感じない、清々しい言い方だった。


「なんの冗談だよ。ただの同居人だろう?」


充が訝るのも当然だろう。ほんの少し前まで、そんな気配はなかったのだから。


「ううん、充くん、本当なの。朋くんとはこの前入籍して」


ね?とふたりで顔を見合わせる。


「だから充くんとふたりで食事は行けない。ごめんね」
「そういうわけだ。今後菜乃を誘いだすのは遠慮してもらいたい。それから、彼女を〝菜乃〟と呼ぶのもやめてくれ。俺だけに許された呼び名だ」


最後のひと言が菜乃花の心臓を大きく揺さぶる。
朋久は菜乃花をさらに引き寄せ、鋭い眼差しで充を射抜いた。
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