S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
でもそこに深い意味はなく、菜乃花に対する形式的な扱いのひとつ。書類上とはいえ夫婦を名乗っている以上、ほかの異性とふたりきりで会うのは他人の目があるため避けるべきだから。
そう自分に言い聞かせるが、掴まれた肩から朋久の手のぬくもりが伝わって鼓動が速まる。
「それじゃ、失礼するよ。菜乃、行こう」
朋久は肩から離した手で、菜乃花の手を握った。
繋いだ手を引っ張られながら、充に会釈をしてその場を離れる。近くにある階段から地下駐車場に向かった。
「朋くん、ありがとう。どうしたらいいかわからなかったから助かった」
依然として繋がれたままの手が菜乃花を早口にさせる。デートで行った遊園地ならまだしも、ここは職場のそば。ドキドキしているのを悟られまいと必死だ。
促されて助手席に乗り込み、車が走りだす。
「今日、ホワイトデーのお返し、大変だったでしょう。手伝ってあげたかったけど、私が配ったらおかしいし、みんなも嫌だろうしね。それに――」
「菜乃」