S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

そんな予定があるとは聞いていなかったから、普通に家に帰るところだった。


「菜乃を迎えに総務部に行ったら退勤したばかりだって言われて、急いで追いかけた」


車通勤なのに地下駐車場に向かわずにエントランスに来たのはそういうわけだったのか。


「そうだったんだ。うれしいな。それでどこに連れていってくれるの?」
「菜乃お望みの豪華なディナーが食べられるところ」


もったいぶって白状しない朋久に連れられて菜乃花がやって来たのは、外資系高級ホテルにあるフレンチレストランだった。
朋久はたまに雅史とここのラウンジへ来るそうだが、菜乃花がそのホテルに足を踏み入れるのは初めて。朋久にエスコートされながら、自然と背筋がピンと伸びる。

黒字に金の文字で『クールブロン』と描かれた看板が掲げられた店に入っていく。黒づくめの男性スタッフに案内されたのは個室だった。
黒で統一されたシックな内装に控えめな照明が落ち着いた空間を作っている。


「菜乃、少しここで待っててくれ」
「え?」
「すぐに戻る」
< 171 / 300 >

この作品をシェア

pagetop