S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

戸惑う菜乃花を置き、着席もせず朋久が個室を出ていく。

(トイレにでも行ったのかな)

心細い気持ちでスタッフに引いてもらった椅子に座った。


「先にお飲物だけでもいかがですか?」


メニューを差し出されたが、朋久が戻るまで待とうと決めて丁重に断る。

手持無沙汰にスマートフォンをいじり、待つこと十数分、朋久は微かに息を切らせて戻った。肩を弾ませ、大急ぎで帰って来たような感じだ。普段、余裕のある様子の朋久とは少し違う。


「どこに行ってたの?」
「ちょっとね」


トイレだろうか。
座るなりメニューを開いて菜乃花の意見を聞きつつ、やって来たスタッフに淀みなく注文する。こういった店もきっと慣れているのだろう。

真っ先に運ばれてきた飲み物は、運転が控えている朋久はノンアルのワイン、菜乃花は彼の勧めもあってロゼワインである。
グラスを持ち上げて乾杯と傾ける。
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