S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「冗談」
「もうっ、朋くんの意地悪!」


ニヤッと笑う彼の胸をトンと叩いた右手を取られ、もうひとつの指輪を託される。


「今度は俺にはめて」


朋久が自分の左手を菜乃花に差し出してきた。

わけもなく緊張しながらその手を取り、朋久がしてくれたように薬指に指輪を滑らせていく。微かに震える指先に気づかれませんようにと祈った。

ふたりの左手に同じリングが煌めき、とても神聖な気持ちになる。


「これで俺たちは本物の夫婦だ」
「……うん」


感慨深くて胸がいっぱいだ。


「菜乃」


名前を呼ばれると同時に唇が重なる。瞬間、観覧車でたった一度だけ交わしたキスが蘇った。
もう一度キスしてもらえるなんて、朋久と本物の夫婦になれるなんて奇跡だ。
< 182 / 300 >

この作品をシェア

pagetop