S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
数秒でキスが解け、朋久が間近で微笑む。
「菜乃、行こう」
朋久は菜乃花の手を取り立たせた。
「今夜は菜乃花を帰さない」
「帰さないって、いつも同じ家に帰ってるのに」
「こら、揚げ足を取るな」
朋久は軽く睨みながら菜乃花の鼻を摘まんだ。
手を引かれてエレベーターで階下へ到着すると、朋久はエントランスとはべつの方向に足を向けた。
「朋くん、どこ行くの? 帰らないの?」
「ふたりでここに泊まろう」
「えっ、ホテルに? 帰さないってそういう意味だったの?」
驚く菜乃花をロビー脇のソファに座らせ、朋久は「ここで待ってて」と言い置きフロントへ向かった。
(朋くんとお泊りなんて信じられない……)
それも有名な高級ホテルに。
しかし菜乃花は夢見心地になる一歩寸前でハッとした。
(私、着替えもメイク道具もなにも持ってないよ)