S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

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朋久が明日の土曜日まで神戸に出張のため、菜乃花は久しぶりにひとりきりの夜を過ごしていた。
簡単なもので夕食を済ませ、お風呂に入ろうと準備していたら、ソファに置いていたスマートフォンが賑やかな音を立てて鳴りはじめた。

朋久かもしれないと飛びついたら、充の父、廉太郎だった。
耳に押し当てて挨拶をすると、廉太郎が話しだす。


『菜乃花ちゃん、充から聞いたんだけど……』


おそらく結婚のことだろう。心なしか声が暗いのは、前回の電話のときに充との交際を勧めてきた経緯があるからに違いない。

廉太郎にも報告すべきだったかもしれないと今さらながら思った。亡くなった父の従兄だから、菜乃花には数少ない血縁者だ。


「おじさま、ごめんなさい。報告が遅くなっちゃった」
『彼とそんな関係になっていると、どうしてもっと早く話してくれなかったんだ』


明るく返した菜乃花と対照的にやけに低い声だ。


「……ごめん、なさい」
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