S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

詰問口調だったため、困惑しながらもう一度謝る。

(そこまで真剣に充くんと結婚させたかったの……?)

驚かれるのは想定済みだが、祝福ムードがまるでないのは少し寂しい。〝おめでとう〟のひと言くらいくれてもいいのにと残念だ。


『今すぐ離婚したほうがいい。いや、すべきだ』
「……え?」


予想の斜め上をいく反応に耳を疑う。
どうして離婚しろだなんて。充との交際を進めたいがためにしては、あまりにも理不尽だ。


『菜乃花ちゃん、聞いてるか?』
「……充くんとはお付き合いしないって」
『そうじゃない。菜乃花ちゃんと彼、京極朋久くんとの問題だ。結婚する前に話してくれれば、いや、そもそもふたりが一緒に暮らすこと自体がいけなかったんだよな』


菜乃花と朋久の問題? そもそも同居自体がダメ?
廉太郎の意図が掴めず、頭の中にクエスチョンマークが行進する。


「おじさま、いったいどういう意味?」
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