S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
的を射ない言いがかりを聞き返した菜乃花だったが……。
『キミたちは……』
廉太郎が口にした言葉は、あまりにも非現実的過ぎるものだった。
「そんな冗談はやめて、おじさま」
『いや、冗談じゃない』
笑い返すが、廉太郎は決して怯まない。
まさかそんなはずは――。
何度も聞き返したが、廉太郎は『信じたくないかもしれないが、おそらく本当だ』と繰り返すだけ。耳が拒絶反応を起こして廉太郎の声が聞き取れない。
(嘘でしょ、そんなわけない)
そう打ち消すのに、廉太郎がことごとく否定をして畳み掛ける。
電話を切る間際にも『早いところ離婚するんだ。子どもでもできたら大変な事態になるぞ。わかったな?』と何度も念押した。