S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
なんとはなしに年賀状の束を取り出したら、なにかがはらりとフロアに落ちた。写真だ。
(誰の写真だろう。お母さんと……)
しゃがんで拾い、まじまじと見る。
(――嘘……おじさまだ)
若かりし頃の母と一緒に写っている男性は、同じく若いときの朋久の父だった。母の肩を抱き、仲睦まじそうに頬を寄せて並ぶツーショット。なにも知らない人が見たら、百人中百人が恋人同士だと認識するような写真だった。
鋭い刃物でひと突きされたような衝撃が胸を襲う。
「あの話は本当だったの……?」
廉太郎が言っていたことを裏づけるような写真を前にして、立っていられずその場にしゃがみ込む。視界がぐらりと揺れ、目眩を起こした。
『キミたちは……兄妹だ』
廉太郎の言葉が頭をぐるぐる駆け巡り、胸を容赦なくえぐる。
菜乃花は、朋久の父である浩平と、母・珠美との間にできた子なのか。廉太郎が言っていたことは真実なのか。